<管理職からの質問>
管理職の困った顔 前回、「懲戒処分の手続き」を教えてもらいましたが、その中で言われていた「懲戒処分における諸原則」について教えてください。
 
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<解説>
社労士 懲戒処分は企業秩序等を維持するためにはとても重要なものですが、自由にできるものではなりません。次のルール、諸原則をよく理解した上で、適正なかたちで行使しなければなりません。
懲戒処分における諸原則 
①罪刑法定主義の原則…懲戒処分の種類や程度、懲戒事由が就業規則に明記されていなければなりません。抽象的な表現でどのようにも捉えられる内容のものはトラブルの元になります。したがって、懲戒事由はできるだけ具体的に規定されていることが必要です。

②相当性の原則…違反行為の程度に応じた懲戒処分でなければなりません。懲戒事由に対して処分が不相当に重い場合には懲戒権の濫用として無効となることが労働契約法15条に明文化されています。

③平等取扱いの原則…同じ程度の違反行為には、同じ程度の懲戒処分でなければなりません。その会社における前例が軽い処分であったにもかかわらず、新たに発生した同様の事案で重い処分は公平な取扱いとは言えないでしょう。バランスを考慮しなければなりません。

④一事不再理の原則…1つの違反行為に対して2回懲戒処分を行うことはできません。「二重処分の禁止」とも言われています。

⑤不遡及の原則…違反行為の事後に作成された規定を当該懲戒処分の根拠とすることは認められません。したがって、想定できる懲戒事案は就業規則に盛り込んでおいてください。

⑥適正手続きの原則…会社で定めている懲戒処分手続(弁明機会の付与、懲戒委員会の審議など)を遵守して懲戒処分を行うことが必要です。重い処分の場合には、手続きの定めがない場合にも懲戒対象者に弁明機会を与えた方が望ましいでしょう。
 
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<ポイント>
! 懲戒処分における諸原則には、次の6つがあります。よく理解した上で、適正な方法で行使してください。
 ①罪刑法定主義の原則、②相当性の原則、③平等取扱いの原則、④一事不再理の原則、⑤不遡及の原則、⑥適正手続きの原則