◆ 「心配だから」
亡くなってしまったが、父は歳を重ねるごとに耳が遠くなった。こちらから話しかけても、なかなか聞こえない様子で反応がない。そのことで、こちらもついイラッとして大きな声になってしまう。ときには怒鳴ってしまうことが何度か。また、父は好きなテレビの音量も次第に大きくしてしまう。近所に迷惑かからないかヒヤヒヤ。そこで、聞こえないと困ることもあるだろうと「補聴器をつけて」とお願いするも断固拒否。「聞こえている」と聞く耳をもってもらえない。
母も、弟も、私も入れ替わりタイミングを計りながら伝える。補聴器もタイプの違うものをいくつか買って渡してみる。うるさく言われるので、渡したその日はつけるものの、翌日からは嫌がってつけない。「心配だから」と言っても、亡くなるまでその態度は変わらなかった。
◆ 「心配」という押し付け
ふり返ってみると、父は困っていなかったのかもしれない。周りが困っているだろう、困っているはずだと思っても、それは周りの考え。困っていないのに、困っているはずだと、決めつけられれば反発する気持ちも今ならわかるような気がする。
また、「心配している」という言葉も、何度も何度もくり返すと、父を追い詰めてしまっていたのかもしれない。父を本当に心配しているのではなく、自分の不安を相手への心配にすりかえて、父に押し付けていたのではないか。自分の不安な気持ちを何とかしたくて、相手に変わって欲しいと押し付け、コントロールしようとしていた。そうかもしれなかったと、今反省している。(参考「気持ちが伝わる話し方」森田汐生著)
◆ 職場での「大丈夫?」
職場で考えてみると“心配している”は“大丈夫?” 「任せるけど、あなた大丈夫?本当に大丈夫?」この言葉の裏には、「あなたが出来なければ、私がその尻ぬぐいをして困るからちゃんとやってね」という相手を責める意味が含まれている。それは感じとして伝わっていて、相手としてはよいイメージを持たない。
では、どう伝えればよいか。任せたら相手を信じる。もし不安があるなら、自分の伝え方が適切だったのかを確認するために次のように言ってみてはどうだろう。「仕事を引き受けてくれてありがとう。あなたと私のイメージを共有しておきたいので、どのように進めようとしているか簡単に教えてくれるかな」「途中、〇〇頃に一度進捗の報告をしてくださいね」
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