<管理職からの質問>
部下からパワハラと指摘されるのを恐れて、厳しく注意指導できない、注意指導しにくいという上司が増えてきているようですが、注意指導をしないのも問題だと思います。部下への注意指導をなぜ行うのか、その必要性についての基本を教えてください。
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<解説>
本来の業務や役割の範疇を超えて、人格や尊厳を侵害する言動は許されるものではありませんが、組織秩序や統制を維持するためには、注意指導は必要不可欠なものです。部下に対して注意指導を行う理由、その必要性については次のとおりです。
①まず第1の理由としては、組織において正しくないこと、望ましくないことを本人に理解させ、改めさせる。
③正しくないこと、望ましくないことを放置していると、その状態が当たり前になり、その後に他の社員が同様のことをしても注意指導できなくなる。
④組織の指揮命令権、人事権を明確にする。
⑤就業規則を実効性あるものにする。
⑥懲戒権や解雇権を合理的なものにし、有効性を担保する。
また、注意指導を行うことができる根拠として、企業には次のような権利があると言われています。少し難しいですが、理解しておいてください。
1.指揮命令権(業務命令権)
労働者による労務の提供(労働義務)と、これに対する企業の賃金支払(賃金支払義務)が対になって労働契約が結ばれています。
この労働義務に対して企業には指揮命令権があると言われています。具体的には、労働の内容・遂行方法・場所などは企業の指示に従って、労働者はその労働を誠実に遂行しなければならないのです。
2.企業秩序定立権
企業は、その存立と事業の円滑な運営のために、
・それを構成する人的要素である労働者と物的要素である施設を上手く兼ね合わせて、
・合理的に、かつ、目的に合った内容で企業秩序を立てて、
・その下に企業活動を行ないます。
そこで、企業はこの企業秩序として必要な諸事項を規則に定め、具体的に労働者に指示・命令をすることができるのです。
3.人事権
企業は、事業を効率的に遂行するために、
・組織を編成し、
・その中に労働者を位置づけて役割を定め、
・労働者の能力・意欲・能力を高めて、
・組織を活性化するための諸種の施策を行なう権限(人事権)を持っています。
具体的には採用、配置(配転)、人事考課、昇進、昇格、降格、休職、出張、出向、解雇など企業組織における労働者の地位の変動や処遇に関する決定権限のことを人事権と言います。
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<ポイント>
部下に対する注意指導は、そもそも組織において正しくないこと、望ましくないことを本人に理解させ、改めさせることにあります。また、企業には①指揮命令権、②企業秩序定立権、③人事権という権利を有しているといわれており、この権利をもとに注意指導、さらには懲戒権を行使することになります。