<管理職からの質問>
労働者に関する法律はたくさんあると思いますが、実際どのような法律が、どのくらいあるのかまったく想像もつきません。すべてを理解しようとは思いませんが、部下を持つ管理職として少なくとも知っておいた方がよい法律はどのようなものがあるでしょうか?
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<解説>
管理職の方であれば、「労働基準法」というものがあるということはご存知でしょう。その他にも従業員の労働条件等に関する法律がありますので紹介します。
従業員(労働者)の労働条件などに関する法律
・「労働契約法」
労働契約に関する基本的な考え方やルールを明確にした法律
・「パートタイム労働法」
パートタイマー(短時間労働者)の労働条件や待遇の改善を目的とした法律
・「育児・介護休業法」
労働者が仕事と育児や介護を両立できるように育児休業や介護休業に関するルールを定めた法律
・「男女雇用機会均等法」
職場において性別を理由とする差別を禁止し、チャンスや待遇が平等に与えられることを図る法律
・「最低賃金法」
賃金の最低限度を定め、会社にその額以上の支払いを義務化する法律
・「高年齢者雇用安定法」
会社に65歳までの雇用を何らかの形で確保するよう義務付けた法律
・「労働者派遣法」
労働者を派遣する事業が適正に運営されること、また派遣労働者の雇用や就業条件を整備する法律
労働基準法はじめ上記の内容については改めて詳しく説明したいと思いますが、従業員を雇用して働かせるには会社のルールだけではなく、国が定めた法律に基づいて対応しなければならないことを管理職として理解しておいてください。
例えば、雇用して間もない従業員は仕事もまだ十分覚えきれていないので、時給は一人前(1,000円)の半額500円でもいいだろう考えても、それは通じません。いくら半人前であっても雇用している以上は、その地域の賃金額以上の支払いは必要です。
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<ポイント>
従業員を雇用して働かせるには会社のルールの他に、国が定めた法律に基づいても対応しなければならないことを管理職として理解しておいてください。
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労働条件
<管理職からの質問>
前回、対象者別の就業規則があるということを教えてもらいましたが、そもそもパートタイマー、契約従業員、嘱託従業員とはどのような人のことをいうのでしょうか?
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<解説>
特に法律で決まっていたり、確定した定義というのはありません。一般的には次のように解釈されていますので、参考にしてください。
・正規従業員(正社員)とは
会社が定めている最も長い所定労働時間の全時間を勤務し、仕事の範囲や責任は大きく、労働契約の期間を特に定めておらず長期にわたって会社に勤めることを前提に採用されている者。
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・パートタイマーとは
正規従業員よりも働く時間が短く、時給によって雇用されている者。一般的には、仕事の範囲や責任は狭く、労働契約の期間は定められている。
・契約従業員(契約社員)とは
労働時間は正規従業員と同等の場合が多く、仕事の範囲や責任は正規従業員と比べると狭く、労働契約の期間が定められている者。賃金は時給や日給、月給などさまざま。
・期間従業員(期間社員)とは
契約従業員(契約社員)と同じ。
・嘱託従業員(嘱託社員)とは
定年後再雇用された者。労働契約の期間は定められており、労働時間は正規従業員と同等の場合もあれば、短い場合もある。仕事の範囲や責任は限定的な場合が多い。賃金は時給や日給、月給などさまざま。
・アルバイト従業員とは
短期間の労働契約で、臨時的又は補助的な仕事に携わり、時給によって雇用されている者。労働時間は、短時間であることが多いが、正規従業員並に働くこともある。
パートタイマー以下は非正規雇用従業員と呼ばれ、名称が違うのは、雇用形態が違うためです。雇用形態が違うということは労働条件が違うことを意味し、雇用形態に応じた個別のルールがあります。それぞれに適した労務管理が必要ということになりますので、違いがあるということをまずは理解しておきましょう。
雇用形態別の条件として特徴的なのは「労働契約期間の有無」と「労働時間の違い」があげられます。この2点に注目し、上記の説明を比較してください。
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<ポイント>
あなたの職場には雇用形態別に、どのような従業員がおられますか? 殆どの会社には名称の異なる従業員が働いています。今後も、正規従業員以外の非正規雇用の従業員が増えてくると考えられます。これらの者を上手く管理していくことが管理職に求められています。そのためには、まず雇用形態別の労働条件を理解しておきましょう。
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<管理職からの質問>
わが社にある就業規則も労働条件について書いていると思いますが、就業規則の目的や役割について教えてください。
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<解説>
労働契約に関する法律として労働契約法や労働基準法をみてきましたが、会社で従業員に共通する労働条件をまとめたものが「就業規則」です。
就業規則を作成する目的は次の2点で、これらを明確にすることによって、明るく、働きやすい職場作りに役立てます。
従業員が安心して働くことができるように労働条件を明らかにすること
会社の収益を上げるために生産性を高め、もしくは顧客や利用者に満足してもらうように仕事の質を高めるために職場の秩序を明らかにし確立すること
就業規則は「職場のルールブック」または「職場の法律」とも言われ、事業主、従業員の双方ともが守らなければならないものです。そのためには、内容をよく理解しておくことが必要です。当然、職場を管理する管理職も内容をきちんと理解しておきましょう。
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<ポイント>
就業規則は職場のルールブックで、会社の秩序を保つために事業主も従業員も内容をよく理解し、守らなければなりません。管理職もきちんと理解してきましょう。
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<他社から学ぶ>
就業規則は、常時10人以上の従業員を雇用する事業所では作成を義務付けられていますので、10人未満の事業所では作成する義務はありません。確かに、小規模事業所では日常の業務では就業規則がなくても支障がないことが多いでしょう。しかし、事業主と従業員との間で労働条件の考え方に違いが生じると、それが元となって大きなトラブルに発展してしまうこともあります。このとき口約束だけでは何の役にも立ちません。トラブルの発生をできるだけ回避するためには、職場のルールを明文化しておいた方がよいでしょう。
実際、従業員が5,6人の会社で遅刻の取り扱いがその都度違うため不満が出てトラブルになったことがありました。取り扱いがブレないようにルールをきちんと決めなければならないということで就業規則を作成したことがあり、基準が明確になったことで、その後トラブルは発生しなくなりました。
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<図書紹介>
理解が難しい就業規則を従業員にわかりやすく表現した形としての「職場のルールブック」。その活用をお勧めし、作成のし方を記した単行本です。投稿者が執筆(共著)しましたので、参考にしていただければ幸いです。
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<管理職からの質問>
私が部下であったときからときどき耳にしていた労働基準法という法律も労働契約に関するルールですよね。 労働契約法とはどう違うのですか?
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<解説>
「労働契約法」が労働契約の基本原則を示していることを前回みました。今回はもう一つ、労働契約に大きな影響のある「労働基準法」をみてみましょう。
「労働基準法」は、会社で働く際の労働条件の基準(それも最低の基準)を示した法律です。労働契約法とは違い、法に規定している内容を強制的に守らせる性質をもっています。それは次の条文に明確に示されています。
【労働基準法】
第13条(この法律違反の契約)
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。
例えば、「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」という労働条件を当事者間で合意し労働契約を締結したとしても、労働基準法で定めている「時間外労働に対し25%以上の割増賃金を支払わなければならない」ことになります。
労働基準法は、労働条件に特に大きな影響を及ぼす内容について、次のように章を設け(投稿者抜粋)、その中で具体的に労働条件を規定しています。
第2章 労働契約
第3章 賃金
第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
さらに、規定した内容を強制的に守らせるために
第13章 罰則
を設け、違反した者に懲役または罰金を科すこととしています。労働基準法を知らなかったとしても法律に違反している場合は処分を科せられることがあります。これは管理職にも適用されます。
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<ポイント>
労働基準法は、規定している内容を強制的に守らせる性質をもっています。知らずに法律に違反した場合でも罰則を科せられることがあります。このことは管理職として知っておきましょう。
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<管理職>
労働契約の基本的なルールとして最初に知っておくべきものは何ですか?
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<解説>
労働契約に関する基本的なルールとして、平成20年3月1日に施行された「労働契約法」を説明しましょう。
この法律は、民事的なルールを定めたもので、個別の労使間のトラブルを未然に防ぐために労使当事者が労働契約に関して留意しなければならない一定の行動基準としての役割をもっています。その基本原則を確認してみます。
【 基本原則 】
労働契約は、労使対等の合意によって締結する(または変更する)。
労働契約は、就業の実態に応じ、バランスを考慮して締結する(または変更する)。
労働契約は、仕事と生活の調和にも配慮して締結する(または変更する)。
従業員も事業主(使用者)も、労働契約を守り、信義に従って誠実に権利を行使し、義務を果たさなければならない。
従業員も事業主(使用者)も、労働契約に基づく権利を濫用してはならない。
管理職が出す判断は、どのような条件や状況の下であっても適切であることが求められます。初めて対応する労務トラブルや対応に迷う問題などの判断をする際には特に、独断で結論を出すのではなく、労働契約法の基本原則に立ち返ってみるとよいでしょう。適切な判断をする参考になります。
また、基本原則は労働基準法や就業規則等を理解するときにも役立ちます。
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<ポイント>
労働契約法の基本原則は、それだけでは実際の労務問題への対応において具体的な結論を導き出すものにはなりませんが、適切な判断を引き出す際の参考となりますので、管理職として知っておきましょう。
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労務管理は幅が広く何から手をつけてよいかわかりません。最初に何を理解すればよいでしょうか?
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まず、雇用の関係について解説しましょう。
会社が従業員を働かせるためには、反対に従業員からすれば働いて賃金を得るためには、まず双方で労働契約(雇用契約)を結びます。これが大前提です。
労働契約は事業主と従業員とが平等の立場で、個別の合意によって成立させることが原則です。したがって、事業主も従業員もお互い労働契約のことをよく理解している必要があり、部下をもつ管理職も同様です。この理解が不十分だと、労働トラブルにつながることにもなります。
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<ポイント>
事業主と従業員との間には労働契約が前提としてあり、部下をもつ管理職はその基本的な内容を理解しておくことが大切です。
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